ジム・シングレーが刑務所からの出所後、町に戻ってきた。6年前、会社の共同経営者だったハーブ・フレミングと喧嘩をして、誤って殺害し、6年の懲役刑を受けていた。事件は物的証拠がなく、住民たちからの証言だけで判決が下された。裁判で有罪の決め手になったのは事件当時13歳だったハーブの娘クレオの証言だったし、判決を下したのはジムの古くからの友人マクベイ判事だった。ジムの突然の帰還に町は動揺する。町にはジムの別れた妻ベルマ、一人息子ウェイン、ハーブの妻オードリーやクレオなどが6年前と変わらず暮らしていた。ジムに再会し、彼の再出発を喜んでいるのは友人マクベイ判事だけだ。ジムは「やり残したことがある」から町に戻ってきたという。住民たちの心境は穏やかではなかった。関係者それぞれの思惑、誤解、思い込み、勘違いなどから生まれた証言によって、ジムの判決が下されていたからだ。
登場人物の内面の葛藤がうまく描かれている。閉鎖的な田舎町だからこそ、起きてしまった事件という感じがする。
著者 Jean Potts は、デビュー作『さらばいとしのローズ』(講談社文庫)で1955年MWA賞処女長篇賞を受賞している。また短篇の名手とも言われ、『世界ベスト・ミステリー50選――名作短編で編む推理小説50年史』(上)(光文社文庫)に「萎えた心」が収録されている。
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