HOME IS THE PRISONER by Jean Potts (1960)

 舞台はアリゾナ州の田舎町。住民は生まれたときからの知り合いで、幼なじみと結婚し、死ぬまで生まれた町を離れず、互いの私生活までよく知る関係だ。横溝正史の岡山物の舞台をのどかにしたような雰囲気といっていいかもしれない。
 ジム・シングレーが刑務所からの出所後、町に戻ってきた。6年前、会社の共同経営者だったハーブ・フレミングと喧嘩をして、誤って殺害し、6年の懲役刑を受けていた。事件は物的証拠がなく、住民たちからの証言だけで判決が下された。裁判で有罪の決め手になったのは事件当時13歳だったハーブの娘クレオの証言だったし、判決を下したのはジムの古くからの友人マクベイ判事だった。ジムの突然の帰還に町は動揺する。町にはジムの別れた妻ベルマ、一人息子ウェイン、ハーブの妻オードリーやクレオなどが6年前と変わらず暮らしていた。ジムに再会し、彼の再出発を喜んでいるのは友人マクベイ判事だけだ。ジムは「やり残したことがある」から町に戻ってきたという。住民たちの心境は穏やかではなかった。関係者それぞれの思惑、誤解、思い込み、勘違いなどから生まれた証言によって、ジムの判決が下されていたからだ。
 登場人物の内面の葛藤がうまく描かれている。閉鎖的な田舎町だからこそ、起きてしまった事件という感じがする。
 著者 Jean Potts は、デビュー作『さらばいとしのローズ』(講談社文庫)で1955年MWA賞処女長篇賞を受賞している。また短篇の名手とも言われ、『世界ベスト・ミステリー50選――名作短編で編む推理小説50年史』(上)(光文社文庫)に「萎えた心」が収録されている。

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